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空想ブログ  蒼い空の下で

主にドラマ「白い影」のサイドストーリーです

あれから1年(5)

翌日、直江家の前に立つ1人の男性がいた

「ここか...」茶色いコートを着た落ち着いた風貌の初老男性がつぶやく

「あれ...もしかして七瀬先生?!」後ろから女性の声がした

近所のスーパーから買い物から帰ってきた泰子が立っている

「おぉ、久しぶりです!いきなり訪ねてすみませんね」初老の男性がそう言って会釈する

「いえいえ、長野から来て下さるなんて...本当にありがとうございます」

泰子もそう言って頭を下げる

七瀬は家に上がって仏壇に手を合わせた

「もう一年か、天国で幸せに暮らしてるかな..」七瀬は出されたコーヒーを飲みながらつぶやく

「私、あの子は今も七瀬先生の病院で働いていて、ある日ひょっこり休みとって帰ってきてくれるんじゃないかと思うことがあるんです。あの日も久々に帰ってきて出かけたきりでしたから...亡骸も見ていないですし」泰子が直江の遺影を見つめながらつぶやく

「私もだよ。また私の病院に戻ってきてくれるんじゃないかと思ってしまう。病院の雪かきしている時とか彼がひょっこり現れて手伝ってくれるんじゃないかと...」七瀬は窓の外の杏奈が作った雪山を見ながらつぶやく

「私も、雪かきしている時、小さい頃弟と雪かきしたこと思い出して涙がでましたよ」泰子は潤んだ目をおさえる

「志村倫子さんと息子さんは?」七瀬が部屋を見渡しながら尋ねる

「あいにく、ちょっとでかけておりまして...夕方まで帰ってこない感じなんですよね」泰子は時計を見ながらつぶやく

「そうですか。私も用事があってお昼には北海道を発たなければいけなくてね。残念だな。でもまた会えますよね。倫子さんによろしく」そういうと七瀬はコートを着る

「ええ、伝えておきますね」泰子もそういうとにこやかに会釈した。

 

夕方、泰子は夕飯の支度をしていた。すると玄関のチャイムが鳴った

ドアを開けるとそこには男性が立っていた。年齢は30代ぐらいだろうか、眼鏡をかけ小太りの体格をしている

「こんにちは。弟さんと北海大で一緒だった山岡洋平です。急にお訪ねしてすみません」男性はそう言って会釈する

「まぁ、この度は来て下さり、本当にありがとうございます」

泰子が頭を下げる

その時玄関のドアの後ろで話し声が聞こえてきた。少し遠くへお土産を買い物買いに行っていた倫子達が帰ってきた

「ただいま~。お客様かな。こんにちは。」真一がそう言って会釈する

「おかえり。庸介と大学病院で一緒だった山岡先生が来てくださったの」そう言って泰子は紹介する

「これは、これは...義弟がお世話になりました。わざわざありがとうございます。義弟も喜んでいますよ。倫子さん、庸介の同僚の方だよ」真一が倫子に紹介する

「お久しぶりです、山岡です。お子さん産まれたんだったね。今が一番忙しい時期だよね」そう言って山岡が気遣う

「お久しぶりです。お葬式でお会いしましたよね。あの時、私を気遣って話しかけてくれたのに、私はショック状態で相槌打つので精いっぱいですみません」倫子はそう言って頭を下げる

「いえいえ、僕のほうこそあんな時に話しかけてすみません。」

山岡は家に上がり、仏壇に手を合わせた

「目鼻立ちとか直江にそっくりだな~将来いい男になりそうだ」山岡はそう言って眠る陽介の顔を覗き込む

「実は直江が亡くなる前日に僕は直江と会ってるんです。」出せれたコーヒーを飲みながら山岡が言う

「えっ...」山岡の言葉に倫子は驚く

「札幌のホテルの前で直江と倫子さん見かけてたんです。僕もそのホテルで学会がありまして。二人とも本当にお似合いでしたよ。絶対結婚するんだろうなと思いましたから...なのに...」山岡は涙声になり言葉をつまらせる

「そうだったんですか」倫子もそう言って目を潤ませる

「前日、直江のほうから帰ってきているから会わないかと誘いがあってね。あいつから誘うなんて珍しいと思ったよ。自分の残り時間がわずかだから会いに来てくれたんだろうな...その時、あなたと一緒にいるところを見たことをちゃかしたら、あいつ照れてたよ幸せそうだった。病気さえなければ...」山岡は流れ出る涙を腕で拭う

「君に出逢えてあいつは幸せだっただろうな...あいつは亡くなる前日だったのに穏やかな顔をしていた。それは君と最後まで一緒にいれたからだよ。もう奥さんみたいなものだよ」山岡があふれ出る涙をハンカチでぬぐいながらつぶやく

「奥さんだなんて...でも彼とは短い期間だったけど、夫婦以上に濃い時間を過ごさせてもらったと思っているんです」倫子も涙ぐみながらも笑みを浮かべる

「でも君が良い人と一緒になったとしてもあいつは喜ぶと思うな」山岡が笑みを浮かべながらつぶやく

「お見合いでもしちゃおっかな?うそうそ」倫子はそう言っておどける

「ははは、今絶対天国の直江が嫉妬してそうだ」山岡が笑みを浮かべながらジョークを飛ばす

「おいおい、もう立ち直ったのかよってね」真一もつられるように言う

「案外、向こうでもモテてて、私のことなんて眼中にないかも」倫子もふざけて言う

「あはは」

一同から笑い声があがった