空想ブログ  蒼い空の下で

主にドラマ「白い影」のサイドストーリーです

白い影サイドストーリー

憩いの場所

「どこに行きます?伊藤さんの行きたいところ行きますよ」 車で杏奈と二人きりになった坪田はドキドキしながら杏奈にたずねる 「そうね...支笏湖に行きたいな。ちょっと時間かかるけどいい?」杏奈は車のミラーで前髪を整えながら言う 「支笏湖ね。行ったこ…

旅立ちの時

「卒業生答辞 伊藤杏奈」 「はい」 袴姿の杏奈が学長に呼ばれて壇上に上がる その日は札幌市内にある北海大学にて卒業式が行われていた。 杏奈は卒業生代表として答辞を読んでいる その姿を保護者席で一恵と泰子、真一が見守っていた。 卒業式が終わった後、…

10年...(2)

「すみません...志村倫子さんいらっしゃいますか?」 ある日の午後、一人の老いた女性がナースステーションをたずねてきた 「志村さーん、お客様です」新人看護師の大森に呼ばれ、奥で事務作業をしていた倫子が窓口に出た 「志村さん、お久しぶりです。あの…

10年...(1)

2011年夏、倫子は院長室に呼び出されていた 「主任?!」 倫子は驚きの声を上げた 「そうです、あなたに是非やっていただきたい」院長が人事配置の資料を見ながら、そう言った 「でも、主任だなんて...」倫子は戸惑う 「あなたの人望の高さを私は買って…

夢へ 2010年

「今日はクリスマス・イブか...」 2010年12月25日と記された日めくりカレンダーを見ながら杏奈はつぶやく 「おっ!杏奈起きてたのか?今日も化粧が濃いな~薄くてもお前は綺麗なのに」起きてきた真一が杏奈のマスカラとアイラインで囲まれた目元を見…

5年ぶり(2)

「直江君と私は保育園から中学まで一緒だったの。親同士が同級生で仲が良かったからよく家を行き来していたな。」ゆり子はコーヒーを飲みながら語る 「高校、大学は違ったから、会う機会も少なくなってね。私はカメラマン目指して東京の芸大卒業した後、修行…

5年ぶり(1)

2004年8月、東京は例年通り、真夏の暑さを迎えていた 「5年ぶりか...」行田病院の前に一人の男性が立っていた 歳は40歳ぐらいだろうか、一重の切れ長の目が特徴的な凛とした顔立ちと日焼けした肌が印象的だ。 ポロシャツにチノパンをまとい、背には…

夢へ

「3077...3077...あった~!!」 2004年2月、まだ雪で覆われている札幌で杏奈はK中学の合格発表を迎えていた 学校では成績トップ、模試でも全国トップクラスに入る杏奈だったので、塾の講師との受験直前の面談でも「合格は間違い無し」と太鼓…

2004年、長野にて

2004年4月 倫子は2歳になった陽介と長野に旅行にやってきた 電車を降りて、レンタカーに乗る タクシーの窓にうつる、東京とは違うのどかな街並みに陽介は興味津津の様子だ 「ここね...」 レンタカーに乗ってたどり着いたのは七瀬病院だった 「おぉ!志…

新たな道

2002年7月 都内の洒落た教会に倫子は来ていた。腕にはおめかしをした陽介が抱かれている 「今日はママの職場の人とパパがお世話になった人の大切な日よ~おりこうさんにしていてね」倫子がそう言って陽介をあやす 「志村さーん」その時、後ろから聞き覚…

あれから1年(5)

翌日、直江家の前に立つ1人の男性がいた 「ここか...」茶色いコートを着た落ち着いた風貌の初老男性がつぶやく 「あれ...もしかして七瀬先生?!」後ろから女性の声がした 近所のスーパーから買い物から帰ってきた泰子が立っている 「おぉ、久しぶりです!い…

あれから1年(3)

3月18日 今日は先生が亡くなって一年になる 倫子は支笏湖には来年行くことにした。 まだ少し気持ちの整理がつかないからだ 1年経過して以前のような明るさを取り戻してきた倫子だったが、亡くなった場所に行く勇気はなかった それは遺された家族全員同じ…

あれから1年2

そのうち一恵と真一も外出先から帰宅した 「倫子さん、久しぶりね。体調は大丈夫なの?」そう言って一恵は倫子を気遣う 「あまり無理しないでくださいね。しっかり休んで」真一も気遣いの言葉をかける 「もう大丈夫ですよ。来月職場復帰します」倫子はそう言…

あれから1年1

2002年3月17日 「どれにしようかな~」 自分の部屋の鏡の前で杏奈は服を吟味している 「杏奈、まだ~」泰子が下から呼びかける 「はーい」 杏奈は急いで服を決め着替えると下に降りていく 「杏奈、手伝って。」泰子が出来上がった料理を渡す 「美味し…

陽だまり

2001年11月 北海道の泰子のもとに電話が入る 「お母さん、産まれたって!!」泰子が受話器を置き、一恵に伝える 「あら~!赤ちゃんと倫子さんはどうなの?」一恵は親子の様子を気遣う 「母子ともに健康ですって。男の子」泰子が答える 「まぁ...良か…

恋の花火

誕生会の翌日、明日の飛行機で北海道に帰る泰子たちは帰り仕度をはじめていた 「今日は川沿いで花火大会があるの。行く?」倫子は杏奈を誘った 「行きたい!」杏奈は嬉しそうに答える 「そんな悪いですよ」泰子は身重の倫子を気遣い止める 「いえいえ、私も…

誕生日2

仕事が終わって、倫子は帰り仕度をしていた 「志村さん、良かったら送るよ」一緒に着替えていた河森が言う 「いえ、そんな良いですよ」そう言いながら倫子はマタニティドレスの上にパーカーを羽織る 「遠慮しないで、今日は先生の誕生日でしょ」河森が二コリ…

誕生日1

8月9日 この日は直江の誕生日だったが倫子はいつも通り、勤務をしていた お腹が大きくなったので、マタニティ用の制服に身を包んで働いている 「仕事終わったら、今日はお母様達と先生の誕生日会。早く片付けなくては」倫子はそう考えながら書類の整理をし…

ガラスのボート2

三人は予約していたホテルに戻った 杏奈は部屋について座るなり、旅疲れで眠ってしまったようだ そんな杏奈を泰子はベットへ運ぶ 泰子と一恵も寝る支度をして、隣り合わせのベットで横になった 「倫子さん、本当に芯の強い人だね」一恵がふとつぶやく 「あの…

ガラスのボート

2001年8月8日 一恵と泰子、そして杏奈の三人は東京に来ていた 空港で降りた後、タクシーに乗り込む 「東京は暑いわねぇ」 泰子が扇子を仰ぎながらつぶやく 「北海道も暑いけど、東京はすごいね」 隣に座る杏奈も首筋に滴る汗をふきながらつぶやいた 「…