夢へ 2010年
「今日はクリスマス・イブか...」
2010年12月25日と記された日めくりカレンダーを見ながら杏奈はつぶやく
「おっ!杏奈起きてたのか?今日も化粧が濃いな~薄くてもお前は綺麗なのに」起きてきた真一が杏奈のマスカラとアイラインで囲まれた目元を見て言う
「私だって、もう19歳だよ。化粧ぐらいするわよ。北川景子ちゃん風にしたんだから」杏奈がそう言いながらブラウン色に染められた髪の毛を整えながらつぶやく
「まぁ、中高の6年間は勉強ばかりだったからな。専門課程始まる3年からは忙しくなることだし。でもハメを外すんじゃないぞ」真一が新聞を読みながら言う
「わかってるわよ~あっ!今日は帰り遅いから」杏奈がミニのトレンチコートを羽織りながら言う
「遅いって...まさか、男と?!」真一が動揺したようにつぶやく
「違うわよ~大学の友達とクリスマス会!!」杏奈がピアスを着けながら言う
「そっか....」真一がホッとしたように言う
「杏奈、今日は合コンなんだもんね!」横で聞いていた泰子がニヤニヤしながら言う
「合コン?!男も来るのか?!」真一はうろたえる
「まぁ...そうだけど。ほら、ウチの大学の医学部の男子は彼女ありが多いし...他学部だと医学部と知った途端に敬遠されるのよ...そこで私たちは市内の違う大学の医学部生と合コンしようってことになって...」杏奈がそう言いながら弁解する
「おいおい、恋人はな、作るものじゃなくて自然の流れで出来るものなんだぞ!母さんとはな...」真一が泰子とのなれそめを語ろうとする
「もうその話、聞き飽きたわよ。学生のうちはキス以上はしないからご安心を」杏奈がそう言って真一をたしなめる
「キスも早いぞ!というか恋愛自体早い!」
「高校時代の友達は私と美奈子以外、みんな彼氏いるのよ~いつまでも子供扱いなんだから!卒業する時にはもう24なんだから、その年までキスしかしないって相当真面目だと思うけどっ」杏奈が呆れたように言う
「確かにそうだよな...変な男にひっかかるなよ」真一はそう言って強く念を押す
「お父さんったら、自分は19歳の私にアプローチしてきたぐらいなのにね」泰子がニヤけながら言う
「えぇ~そうなの~」杏奈もニヤけながら便乗する
「余計なことを...」真一がたじろぐ
その時電話が鳴った
「泰子、電話!」助かったとばかりに真一が泰子に出るように促す
「もしもし、伊藤です。あら?!陽介ちゃん」その電話は東京にいる陽介からだった
「3月16日にこっちに帰るのね?叔母さんもお祖母ちゃんも叔父さんも楽しみに待ってるわよ~杏奈?変わるわね。杏奈、陽介ちゃん」そう言って泰子は受話器を杏奈に渡す
「もしもし!」杏奈が電話に出る
「久しぶり!来年3月帰るからよろしく~」陽介もノリよく答える
「はいはい、それよりあんたゲームばっかりやってるんですって。ちゃんと勉強しなさいよ」杏奈が母親のように陽介に説教をする
「まぁまぁ、これでも成績は良い方なんだぞ」陽介が小生意気に答える
「中学入ったら大変なんだから~その時に備えて勉強しとき!」杏奈が陽介の小生意気な態度を制するように言う
「はいはい~そういえば大学でボーイフレンドは出来たの?」陽介がはやし立てるように言う
「まだ募集中よ!」杏奈が強く答える
「やっぱりな~その気の強い性格直さないと一生募集中だぞ!」陽介の冷やかす声が聞こえる
「うるさいな~帰ってきても何も買ってあげないわよ」杏奈もムキになる
「うわっ、ごめんごめん。杏奈様が美しいから男が寄ってこないのであります」陽介がふざけておべっかを言う
「よろしい」杏奈が得意げに答える
「こら~陽介生意気な口のきき方するんじゃないの!」受話器の向こうから倫子が叱る声が聞こえる
「ひゃ~母さん!」陽介がそう言いながら退散する
「杏奈ちゃんごめんね。陽介が生意気で」電話を変わった倫子が謝る
「いえいえ、元気そうで私も嬉しいです」杏奈も笑いながら言う
「杏奈ちゃん、大学はどう?」倫子が聞く
「まだ教養課程で医学については学んでいないけど、教養科目も楽しいし、遊んだりバイトしたり大学生ライフ満喫してます。そうそうボート部のマネージャーもやってます」杏奈が近況を報告する
「良かった~、あの人も嬉しいだろうな」倫子が言う
「でもちゃんと卒業して国家試験に受かるまではは油断できないですよね。今でも母にそれまでは叔父さんも安心できないわよと言われてます」杏奈が苦笑いしながら言う
「まだ、杏奈ちゃんの弱点はあの人なのね」倫子が笑いながら言う
「ですね。一生そうかも」杏奈が苦笑いしながら言う