空想ブログ  蒼い空の下で

主にドラマ「白い影」のサイドストーリーです

旅立ちの時

「卒業生答辞 伊藤杏奈

「はい」

袴姿の杏奈が学長に呼ばれて壇上に上がる

その日は札幌市内にある北海大学にて卒業式が行われていた。

杏奈は卒業生代表として答辞を読んでいる

その姿を保護者席で一恵と泰子、真一が見守っていた。

 

卒業式が終わった後、杏奈は校門で同級生達と写真撮影をしていた

「はい、チーズっ!!吉田くんありがとね!!」杏奈は撮影をしてくれた男子学生にお礼を言うとにこやかに笑いかける

「いえいえ、伊藤さんのお願いならなんでもってね。おい、坪田~。伊藤さんと今日でお別れだぞ。ツーショット撮れよ~」吉田はそう言って隣にいる坪田と呼ばれた男子学生を肘でつつく

「ちょっと、やめろよ~」坪田はそう言って顔を赤くする

「二人とも、こうして見ていると入学した時と変わってないわね~坪田君は実家長野でしょう?むこうに帰るの?」杏奈は二人の様子を見て笑うと、坪田に尋ねる

こちらで働くんだ。伊藤さんは大学の病院に入るんだよね」

「そうなの、いずれは坂下先生の元で働きたいなと思っていてね。坪田君は札幌の病院?」

「そうなんだ。N病院。」

「N病院ってことは、深雪と一緒だ!!深雪、坪田くんとても頼りになると言っていたから喜ぶわ~」杏奈はそう言ってはしゃぐ

「深雪さんって、松尾さんのことだよね!彼女も面白い子だよね。楽しみだな。あっ!ちょっと用事思い出したからごめんね。お互い頑張ろうね。」坪田はそう言ってその場を離れようとする

「坪田君も頑張ってね!」杏奈もニコリと笑うと友人達の元に駆け出した

その後姿を坪田は見つめていた

「おい~、何で伊藤さんに言わなかったんだよ~ずっと好きでしたって」吉田がふてくされたように言う

「俺では告白しても無理だよ。伊藤さんモテモテだもん。あのイケメンで名高いS病院の息子が告白してもダメだったんだから」坪田が苦笑いしながら言う

「あいつは遊び人だからだよ。いつも合コンして女の子持ち帰ったとか話しているようなやつだから。伊藤さんイケメンとかお金持ちだからってことだけでは好きにならないような子だよ。それにしても伊藤さんは袴姿も綺麗だなぁ」吉田はそう言いながら友人達と談笑する杏奈の姿を見つめる

「陽一!ここにいたのね。どこへ行ったのかと思った。」

その声がした方向を振り向くと、ベージュのスーツを着た人のよさそうな顔立ちの小太りの女性が立っている。隣には背の高い温和そうな顔立ちの初老の男性が立っていた

「母さん!!先帰ってていいのに」坪田は母親にそう言い返すも、嬉しそうだ

「全く、照れ屋なんだから。あっ!あなたが吉田くんね。陽一がお世話になりました。」そう言うと坪田の母親は頭を下げる

「いえいえ、こちらこそ。坪田君がいなかったら遊びまくって留年していましたよ。陽一君の真面目さにかなり影響を受けましたから」吉田もそう言って軽く頭を下げる

こちらこそ、ありがとう。陽一も吉田君がいたからこそ、勉強が大変でも前向きに乗り越えられたんだよ。」隣にいる男性もそう言って吉田の肩に手を置く

「いえいえとんでもない。僕はただいつも坪田君の隣でバカやっていただけですよ~」吉田はそう謙遜しながらも嬉しそうだ

「おぉ~これはこれは坪田先生」後ろの方で坪田の父を呼ぶ声がする

「坂下先生!!息子がお世話になりました」そう言って坪田の父は坂下にかけより頭を下げる

「いえいえ、こちらこそひたむきに努力する息子さんの姿を見て、教えられることがたくさんありましたよ。あっ!!紹介したい子がいるんです。おーい、伊藤くん。」坂下はそう言って杏奈を呼ぶ

伊藤杏奈くん。直江先生の姪です。伊藤くん、こちらは叔父様が長野の七瀬病院でとてもお世話になった坪田先生。」坂下はそう言って杏奈を坪田に紹介する。

伊藤杏奈です。叔父が本当にお世話になりました」杏奈はそう言って頭を下げる

「さきほど答辞を読んでいた子だよね。直江に目元が似ていて美人だなぁ。叔父さん、君の写真を病院の自分の机の上に飾ってたんだよ~。僕も同じ年の息子がいるから、直江とは君の話もよくしたよ。あの時の子がもう医学部卒業する年なんだな...直江が亡くなって15年経つんだもの。直江、喜んでいるよ君が医師になってくれて」坪田の父はそう言って、空を見上げる

「叔父が亡くなって、もう15年経つのが信じられないです。あと6年したら叔父が亡くなった歳になるんですから」杏奈もそう言って空を見上げる

「それにしても息子と直江の姪である君が同じ大学で同級生とは驚いたよ」坪田の父は遠くで吉田達とふざけ合う息子の姿を見ながら言う

「坪田君、本当に誠実な人で...見習わなくてはいけないと思うことがたくさんありましたよ」杏奈ははにかむように言う

「杏奈~何してるの~」後ろの方で杏奈を呼ぶ声がする

「おぉ、お友達がお呼びみたいだね。私はこの辺で、伊藤さん良い先生になってね」そう言って坪田の父はその場を離れる

「ありがとうございます」あんなは恐縮した様子で坪田に頭を下げる

 

「ねえねえ、あんたが言っていた医学部で気になる子って黄緑の袴着ていた子?お父さんの後輩の姪御さんという」駐車場に向かう道で坪田の母が興味津津そうに坪田に尋ねる

「まぁ...」坪田は返答を濁しながらも否定しない

「やっぱり?綺麗な子だよね。その後輩の方もハンサムだったみたいだけど。感じも良い子だよね。告白しなかったの?」坪田の母ははしゃぎながら言う

「俺には無理だよ。彼女美人だし、頭も性格も良いからモテるんだよ。大病院のイケメン御曹司ですらふられたんだよ」陽一はそう言いながら頭をかく

「でも、さっき挨拶したら伊藤さんはお前に好印象そうだったぞ。おい、今ならまだ伊藤さんいるから告白だけでもしたほうが良いぞ。男なら当たってくだけろだ。母さんと俺はタクシーでホテル帰るからさ。告白成功したら車でデートでもしろ。ほれほれ」坪田はそう言って陽一を学内に戻るように背を押す

 

その頃、杏奈は友人の深雪と校門に向かって歩いている

「杏奈、写真求められてすごかったわね~さすが医学部随一の美人」深雪がそう言って杏奈を茶化す

「そんな、ボート部のマネージャやっていたから顔が広いだけ。」杏奈が戸惑うように否定する

「いやいや、日ごろ話したことが無い男どもが群がっていたじゃん。Sくんなんて一度お断りしたのに、この後食事でもどう?とか言ってきて。Sくん遊び人だけどイケメンだしS病院の御曹司じゃん。付き合ってみたら良いのに」

「Sは結婚相手と遊ぶ相手わけて考えてるよ。遊びのつもりだって」杏奈がSの女たらしぶりを思い出して呆れたように言う

「杏奈は真面目なんだから~彼氏欲しいとか言って結局勉強と部活一筋で作らなかったよね。あっ!あれ坪田君じゃない!坪田君~!何してるの?」深雪が校門の外からこちらを見ている坪田の姿を見つけ叫ぶ

「坪田君、どうしたの忘れ物?」深雪は坪田の近くまで来るとそう言って茶化した

「いえ、あの...伊藤さん..この後時間ありますか...良かったら食事しませんか...」坪田が照れくさそうに杏奈を誘う

「坪田君...いいね。卒業祝いってことで一緒に美味しいもの食べたいね」杏奈ははにかみながらもとてもうれしそうだ

「おやおや、良い感じだねぇ...私はここで失礼」深雪はそう言って二人の元から去って行った

 

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