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空想ブログ  蒼い空の下で

主にドラマ「白い影」のサイドストーリーです

5年ぶり(2)

「直江君と私は保育園から中学まで一緒だったの。親同士が同級生で仲が良かったからよく家を行き来していたな。」ゆり子はコーヒーを飲みながら語る

 

「高校、大学は違ったから、会う機会も少なくなってね。私はカメラマン目指して東京の芸大卒業した後、修行を始めたのだけど全く芽が出なくて...28歳の時かな、カメラマンで食べていける見込みなくて諦めて北海道に帰ったの。帰って1年経ってこれから何をしようか迷っている頃に直江君に写真頼まれてね。写真を受け取った直江君が電話で写真を見て癒されているんだと言ってくれたから、やっぱり私は写真を通じて人の心を動かしたいと思ってまた写真撮り始めたの。ある時、ダメ元で出版社に写真持ち込んだら、仕事のオファーをもらえてね。それからは順調に仕事入るようになって、なんとかカメラマンで暮らしていけるぐらいになれた。」ゆり子が語る

 

「へぇ、そうだったんだ」倫子がコーヒーを飲みながら聞き入る

 

支笏湖の写真から撮り方が変わったと言われるようになったの。前は評価を狙ったような撮り方だったけど、心に訴えるような写真を撮れるようになったんじゃないかと恩師にも言われて」ゆり子は窓の外を見ながら言う

 

「へぇ...」倫子はゆり子の話に聞き入っている

 

「ところで、お二人はなにがきっかけで知り合ったんですか?」

 「私が出版社に持ち込むために上京した時に立ち寄ったバーで夫が隣の席だったの。夫もカメラ好きだから意気投合してね」ゆり子が照れながら言う

 

 

「北海大の知人から直江はゆくゆくは教授になるようなエリートだったとは聞いていたけど、彼と初めて一緒に仕事した時、その腕には驚いたな...行田病院に来る際も高徳大学医学部に誘われるだけのことはあると思ったよ」坂下が出されたコーヒーを飲みながら語る

「僕は彼がなぜその誘い断ったのか不思議に思ってね、君はこれだけの腕があるのになんで誘いを断ったの?と聞いたことがあった」坂下が当時を回想するようにつぶやく

「そしたら彼に、出世のために医師になったんじゃないんでと返されたよ。実は僕も直江と同じ理由で大学病院を辞めた人間なんだけど、親父からそのことをことあるたびに批判されて自信を無くしている時だった。でも彼のその言葉で心の迷いが無くなったよ」坂下が窓の外を見ながら穏やかな顔で語る

”坂下先生も、直江先生に救われた人なのね”倫子はその話を聞きながら心の中でつぶやいた

 

「あら~誰かいらっしゃってるの?!」玄関のドアが開く音がした後、清美の声が響く

「お母さん!直江先生がお世話になった先生がいらしてるの」倫子がそう返す

「あら~これは初めまして。私、志村倫子の母でございます。ほら、陽介、パパがお世話になった人よ。あいさつしなさい」清美はそう言って隣にいる男児の背中を軽く触れる

「こんにちは、はじめまして」男児が愛らしく答える

「ようすけって...もしかして...」坂下が確かめるように言う

「はい、彼と私の子供です」倫子が穏やかに答えた

 

「それにしても小さい時の直江君に良く似てるなあ~陽介くんと遊んでいると私も保育園の頃に戻ったみたい」ゆり子は陽介と遊びながらつぶやく

「直江の子供時代って感じだな」坂下もそんな二人の様子を見て微笑む

「北海道に来たら、息子さんと遊びに来たくださいね。」ゆり子がそう言って笑みを浮かべる

「はい、ありがとうございます」倫子もにこやかにそう返す