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空想ブログ  蒼い空の下で

主にドラマ「白い影」のサイドストーリーです

あれから1年2

そのうち一恵と真一も外出先から帰宅した

「倫子さん、久しぶりね。体調は大丈夫なの?」そう言って一恵は倫子を気遣う

「あまり無理しないでくださいね。しっかり休んで」真一も気遣いの言葉をかける

「もう大丈夫ですよ。来月職場復帰します」倫子はそう言ってニコリと笑った

「子育てで大変なのに、もう仕事も再開するのね...父親の分まで頑張ってるわねぇ...」一恵はそう言うと涙ぐんだ

「私は仕事好きなので、仕事と子育て両方やったほうがリフレッシュになるんです」倫子はそう言うと茶目っけたっぷりに笑った

「まぁ...でも無理してはだめよ。してほしいことあったら私たちに何でも言ってね...」一恵はそう言うと倫子の肩にふれた

「そうそう、さっき中野食品の奥様に会ってね、これ皆さんで食べて下さいって」

一恵はそう言うと持っていた紙袋の中から新聞紙に包まれたものを取り出す

開けると中にはタラバガニが入っていた

「すご~い。こんなに豪華なものを」一同は声をあげる

「明日中野さんの奥様にお礼言わなくてはね。中野食品の息子さんと奥さんは庸介の同級生でね。奥さんは野球部のマネージャーだったの」そう言いながら一恵はタラバガニを取り出す

「そうなんですか。あっ!手伝いますよ」倫子はそう言って台所に向かった一恵の後を追う

 

食事会が終わって陽介と杏奈は寝てしまい寝室に連れていかれた

泰子と一恵は杏奈を寝かせに行き、倫子と真一は静まり返ったリビングでお茶を飲む

「明日で亡くなって一年になるんだな」真一が天井を見ながらしみじみとつぶやく

「この一年早くも長くも感じましたよ」倫子もせんべいを食べながらつぶやく

「泰子と結婚する時、庸介君と初めて会った時のことを思い出すな。彼はまだ大学生だった」真一はそう言うとリビングに飾られている写真を手に取った

それは真一と泰子の結婚式の集合写真だった。まだ20歳ぐらいの幼い顔立ちの直江がスーツを着て緊張した面持ちで写っている

「これ?先生ですか?」倫子はその青年を指さしてたずねる

「そう、まだあどけないでしょ。結婚式でスピーチをしてくれてね」そう言って真一が懐かしむように笑みを浮かべる

「先生がスピーチ?」あの寡黙な直江からは想像つかないことに倫子は思わず笑ってしまう

「泰子についてね、男前でいつも母や僕を支えてくれた。弱音を吐かずに自分のことは二の次に僕の面倒をみてくれた。そんな姉が真一さんに甘えているのを見るたびに幸せになります。とね。こんな弟を持って泰子は幸せだと思ったよ」真一は当時を思い出しながら語る

「でもね、僕らから見たら庸介くんこそ弱音を吐かずに自分のことは二の次に頑張ってきた人なんだなと思う。もっと弱音を吐かせてあげられたらな...もっと甘えて欲しかった。あなたが彼のそばにいてくれて本当に良かった」真一はそう言って涙ぐんだ

「杏奈が小さいころ、庸介くんは実家住まいだったからよく面倒を見てくれたよ。よくご飯食べさせたり、遊んでた。その様子見て彼もいつか素敵な父親になるんだなと思ってた...なのに...なんでだよ...」真一の目からは涙が滴っている

「先生がご飯作ったり、遊んでたのなんて想像つかないな」そう言って倫子も涙を手で拭く

「杏奈も将来恋人出来るんだろうなって話になったら、その時は会って見極めるとか言ってた。変な男にひっかからないように守ると。その様子をからかったら姪でもこうなんだから、娘ならデートにまでついていきそうだなと自嘲してたよ」真一は泣きながらも笑みを浮かべる

「あはは」直江の意外な姿に倫子も声をあげて笑う

「さて、そろそろ寝るとするか。おやすみ」そういうと真一は立ち上がり自室へ向かう

「おやすみなさい」倫子もにこやかに返した