陽だまり
2001年11月
北海道の泰子のもとに電話が入る
「お母さん、産まれたって!!」泰子が受話器を置き、一恵に伝える
「あら~!赤ちゃんと倫子さんはどうなの?」一恵は親子の様子を気遣う
「母子ともに健康ですって。男の子」泰子が答える
「まぁ...良かったわね」一恵が安堵の表情を浮かべる
4日後、一恵と泰子は飛行機に乗って東京に向かった
倫子と産まれた子供を見舞うためだ
清美に教えられた、住所を頼りに都内にある産婦人科病院にたどり着いた
「おじゃましまーす」泰子と一恵は倫子が入院している部屋に入る
「お母様とお姉さま、わざわざすみませんね...」倫子はベットの上で礼を言う
「こちらこそあの子の子供を産んでくれてありがとう。母子ともに健康で良かった...これから私たちもサポートするから、何かしてほしいことがあったら言って」泰子が倫子の肩に手を置きながら言う
「ありがとうございます」倫子は笑みを浮かべながら礼を言う
清美も含めて4人で新生児室に向かう
「これが、先生の赤ちゃん」倫子が手で指し示した先には赤ん坊がすやすや眠っていた
新生児室から出してもらい、一恵がだっこをする
赤ん坊は切れ長の瞳と筋の通った鼻をしていた
「あの子に似てるわね...あの子が産まれた時のことを思い出すわ...」一恵はそう言って目を潤ませる
「生まれ変わりね」泰子もつぶやく
「私、ようすけとつけることにしたんです」倫子は笑みを浮かべながら言う
「あの子と同じ名前?」
「ようの字は陽だまりの陽にします。先生が私に遺してくれたひだまりのような子なので」
「まぁ...」一恵と泰子は涙ぐむ
二人が帰った後、倫子は病室で陽介を抱きながら心の中でつぶやいた(陽介、産まれて来てくれてありがとう。先生、二人でしっかり生きていくので見守ってくださいね)